
ランニング中や階段を駆け上がったときに、思いがけず尿が漏れてしまった経験はありませんか。恥ずかしさから誰にも相談できず、一人で悩んでしまう方も多いテーマです。走るときに起こる尿漏れには医学的な原因があり、正しく理解すれば自宅でのケアや医療機関での治療によって改善を目指せます。
本記事では原因の見分け方から自分でできる対策、受診の目安までを解説します。
走ると尿漏れするのはなぜ?考えられる主な原因

走ったときに尿が漏れる背景には、膀胱や尿道を支える骨盤底筋の働きが深く関わっています。骨盤底筋は骨盤の底でハンモックのように内臓を支える筋肉群で、この筋力が低下すると、走る・跳ぶ・くしゃみをするといった腹圧がかかる動作で尿道をしっかり締められなくなり、尿が漏れやすくなります。
骨盤底筋の筋力低下
骨盤底筋は加齢とともに徐々に衰えていく筋肉です。特別な負荷をかけていなくても、日常生活の中で少しずつ筋力が落ちていくため、若いころは気にならなかった運動でも尿漏れが起こりやすくなります。
出産や加齢によるホルモンの変化
経腟分娩を経験すると、分娩時に骨盤底筋や周辺の組織が引き伸ばされ、筋力が低下しやすくなります。また加齢に伴って女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減ると、尿道や膣まわりの組織の弾力が失われ、尿道をしっかり閉じる力が弱まることも一因とされています。
姿勢や生活習慣による影響
猫背などの姿勢のくせは骨盤底筋に余計な負担をかけ、肥満や便秘によるいきみも腹圧を高める要因です。カフェインの摂りすぎは膀胱を刺激しやすいため、走る前の水分の摂り方にも注意が必要です。
ランニング以外にも、腹圧が急に高まる動作では同じように尿漏れが起こりやすくなります。縄跳びやジャンプを伴うスポーツ、階段の上り下り、重い荷物の持ち上げ、勢いよくくしゃみをしたときなどが代表的な場面です。「走るときだけ気になる」という方も、実際にはこうした複数の場面で軽い尿漏れが起きていることに気づいていないケースがあります。
それって腹圧性尿失禁かも?症状の特徴をチェック
走る・くしゃみをする・重い荷物を持つといった場面で尿が漏れる場合、「腹圧性尿失禁」と呼ばれるタイプが疑われます。これは骨盤底筋の緩みによって、お腹に力が入った瞬間に尿道を締め切れなくなることで起こります。
日本泌尿器科学会によると、尿失禁は40歳以上の女性の4割以上が経験しているとされ、決して珍しい症状ではありません。
尿もれには複数のタイプがあり、原因や対策が異なります。自分の症状がどのタイプに近いか、下記で確認してみてください。
| タイプ | 主なきっかけ | 特徴 |
| 腹圧性尿失禁 | 走る、くしゃみ、咳、重い物を持つ | 腹圧がかかった瞬間に少量が漏れる |
| 切迫性尿失禁 | 急な尿意 | 我慢できずトイレに間に合わず漏れる |
| 混合性尿失禁 | 運動時と急な尿意の両方 | 腹圧性と切迫性の症状が重なる |
走ったときにだけ漏れる、量は少なめという場合は腹圧性尿失禁の可能性が高く、急に強い尿意を感じて漏れる場合は切迫性尿失禁が疑われます。両方の心当たりがある方は、混合性尿失禁の可能性も考えられます。
自宅でできる対策|骨盤底筋トレーニングと生活習慣
腹圧性尿失禁の対策として、まず取り組みやすいのが骨盤底筋トレーニングです。継続することで骨盤底筋の働きが改善し、運動時の尿漏れが軽減する場合があります。
骨盤底筋トレーニングの基本
肛門・膣・尿道を意識してキュッと締め、5秒ほどキープしたあとにゆっくり力を抜くという動作を1日数回繰り返します。仰向けや座った姿勢など、生活の中で無理なく続けられる体勢で行うことがポイントです。効果を感じるまでには数カ月単位の継続が必要とされているため、焦らず習慣化することが大切です。
やり方の一例は次のとおりです。

1. 仰向けに寝て、両ひざを立てる。お腹や太ももに力が入らないよう意識する
2. 肛門・膣・尿道の周りをキュッと締め、5秒ほどキープする
3. 締める力と同じくらいの時間をかけて、ゆっくりと力を抜く
4. 1と2の動作を10回程度繰り返し、これを1日2〜3セット行う
慣れてきたら、座った姿勢や立った姿勢でも同じ動作を取り入れると、日常生活の中で無理なく継続しやすくなります。締める場所がわかりにくい場合は、排尿を途中で止めるときに使う筋肉を意識すると感覚をつかみやすいですよ。
関連記事:骨盤底筋トレーニングのやり方と効果|女性の尿もれ・頻尿改善法
見直したい生活習慣
水分は極端に控えるのではなく、こまめに適量を摂ることが基本です。コーヒーや緑茶などカフェインを含む飲み物は膀胱を刺激しやすいため、運動前は控えめにするとよいでしょう。便秘の改善や適正体重の維持も、腹圧を減らすうえで役立ちます。
医療機関で受けられる治療法
セルフケアを続けても症状の改善を感じにくい場合は、医療機関での治療も考えましょう。
骨盤底筋訓練の指導・薬物療法
自己流のトレーニングでは正しく筋肉を使えていないケースもあるため、医療機関で専門的な指導を受けると、より効率的に取り組めます。症状のタイプによっては、膀胱の過剰な収縮を抑える薬が用いられることもあります。
関連記事:頻尿の治療薬とは|種類・効果・副作用と薬以外の選択肢【医師監修】
磁気刺激治療「スターフォーマー」
近年は、椅子に座るだけで高強度の磁気刺激により骨盤底筋を収縮させる治療機器も登場しています。
当院で導入している「スターフォーマー」もその一つで、自分の力でトレーニングを続けるのが難しい方の選択肢に加えられます。詳しい治療内容や費用については、下記のページをご覧ください。なお、スターフォーマーは保険適用外の自由診療であり、効果や改善の程度には個人差があります。
👉 スターフォーマーについて詳しく見る
手術療法
セルフケアや保存的治療で改善が難しい場合には、尿道や膀胱の位置を支える手術療法が検討されることもあります。どの治療を選ぶかは、症状の程度や生活への影響を踏まえて医師と相談しながら決めてくださいね。
治療の選択肢は以下の通りです。
| 治療法 | こんな方に向いている | 特徴 |
| 骨盤底筋訓練の指導 | 症状が軽度〜中等度の方 | 自己流より正確に筋肉を使えるようになる |
| 薬物療法 | 切迫性の症状を伴う方 | 膀胱の過剰な収縮を抑える |
| 磁気刺激治療(スターフォーマーなど) | 自力でのトレーニング継続が難しい方 | 座るだけで骨盤底筋を刺激できる |
| 手術療法 | 保存的治療で改善しにくい方 | 尿道や膀胱を支える構造にアプローチする |
どの治療法にもメリットと注意点があるため、まずは医師の診察を受けたうえで、自分の症状や希望に合った方法を選ぶことが大切です。
当院の受診について詳しく知りたい方は、排尿のお悩み(症状診断)ページもあわせてご覧ください。
何科を受診すればいい?受診の目安

走るときの尿漏れで受診を考える場合、まず候補となるのが泌尿器科です。女性の場合は婦人科でも相談できますが、排尿に関する症状を専門的に扱っているのは泌尿器科です。両方を標榜しているクリニックであれば、婦人科的な背景(出産歴やホルモンの状態など)も含めて相談しやすくなります。
受診を検討したいタイミング
尿漏れの量が増えてきた、パッドが手放せなくなった、外出や運動を控えるようになったなど、生活の質に影響が出てきたと感じたときは受診を検討するサインです。血尿や排尿時の痛みなど、ほかの症状を伴う場合も早めに医療機関へ相談することをおすすめします。
尿漏れについてよくある質問
Q. 尿漏れが気になる間は、ランニングを控えたほうがよいですか。
症状の程度によりますが、多くの場合は運動そのものを完全にやめる必要はありません。尿漏れパッドを併用したり、トレーニングで骨盤底筋の働きを整えたりしながら、無理のない範囲で運動を続けている方も多くいます。ただし症状が強い場合や不安がある場合は、運動量を調整しながら医師に相談してください。
Q. 骨盤底筋トレーニングはどのくらい続ければ変化を感じられますか。
個人差はありますが、数週間から数カ月ほど継続することで、変化を感じやすくなるといわれています。すぐに効果が出なくても、毎日少しずつ続けることが大切です。
Q. 若い世代でも走ると尿漏れすることはありますか。
出産経験がなくても、スポーツで骨盤底筋に負担がかかり続けている場合や、姿勢のくせがある場合には、若い世代でも症状が出ることがあります。年齢に関わらず、気になる症状があれば早めに相談しましょう。
まとめ
走るときに起こる尿漏れの多くは、骨盤底筋の緩みによる腹圧性尿失禁が関係しています。自宅での骨盤底筋トレーニングや生活習慣の見直しに加え、必要に応じて医療機関での治療を組み合わせることで、症状の改善を目指せます。一人で抱え込まず、気になる症状があれば早めに専門の医療機関に相談してみてください。
走るたびに気になる尿漏れ、困りますよね。まずはお気軽にご相談ください。
スターフォーマーは自由診療(保険適用外)です。施術費用の目安は1回8,000円〜(お試し1回5,000円、通常価格・コース料金は公式ページをご参照ください)、1コースは週2回×4週間(計8回)が目安です。まれに軽い筋肉痛のような症状が出ることがあります。
また、体内にペースメーカーや金属インプラントが入っている方、妊娠中の方などは施術を受けられない場合がありますので、事前に医師にご相談ください。
なお、スターフォーマー(FOTONA社製)は、日本国内で薬機法上の承認を受けていない医療機器です。米国FDA(食品医薬品局)の認可、およびEU(欧州連合)での医療機器認証(CEマーキング)を取得しています。当院では医師の判断のもと、個人輸入により導入し、自由診療として提供しております。効果には個人差があり、主なリスク・副作用については診察時に医師が十分にご説明します。
監修者
足立 浩幸
院長 / 城東鶴見腎・泌尿器科クリニック/泌尿器科・腎臓内科
泌尿器科・人工透析・総合内科・救急科での豊富な診療経験を経て、2025年6月に大阪市城東区にて開業。排尿障害・尿失禁・性感染症・泌尿生殖器癌など幅広く対応し、患者一人ひとりに寄り添った丁寧な診療を提供している。

