腎臓のお悩み

こんなお悩みは
ありませんか?

腎臓について

腎臓は、腰のあたりで左右にある10cmぐらいの臓器です。主に、おしっこをつくることで体内の無駄な水分や老廃物を捨てています。他にナトリウムなどのイオンの調節、酸性・アルカリ性のバランスの調節、赤血球産生の調節など多彩な働きをしています。

尿をどのように作っているのでしょうか?

腎臓に流れる血管は徐々に細くなり、糸球体という毛細血管の塊になります。この毛細血管の隙間から、血液を濾して尿を作っています。1つの腎臓に約100万個の糸球体があります。腎臓は、尿を作るために血管の塊のようになっています。

尿潜血

尿中に赤血球が混じる時は、腎臓や尿管、膀胱、尿道に何らかの異常が起きている可能性があります。がんによる血尿や、腎炎による血尿のこともあるので、まずは正確な診断を行って、原因を確認することが大切です。

蛋白尿

蛋白尿の原因としては、急性腎炎や慢性腎炎などの腎臓に限局した病気と、糖尿病、膠原病(こうげんびょう)、高血圧などの全身性の病気の一部として、腎臓に障害が起きる場合があります。原因によって、治療法がそれぞれ異なってきますので、まずは正確な診断を行って、原因を確認することが大切です。

加齢による腎機能低下

加齢とともに腎臓の糸球体は硬くなり、そのため濾過機能が低下した糸球体が次第に増えてきます。また、尿細管が厚くなったり、尿細管と尿細管の間の組織(間質)が線維化したりするなど、形態的な変化も見られるようになります。さらに毛細血管には、動脈硬化が生じてきます。
腎臓は予備力が大きい臓器なので、障害されている部分が小さければ、腎機能は正常に保たれます。しかし、障害が進むと腎臓への血液の流れが減り、糸球体の濾過能力や尿の濃縮力が低下します。そのため、高齢の方が多尿・頻尿になる原因の一つと考えられています。

糖尿病性腎症

           

血糖値が高い状態が長く続くことによって、全身の血管の動脈硬化が進行します。腎臓においても、血管が破れたり詰まったりして、老廃物を濾過できず尿を作れなくなってしまいます。進行すると、人工透析によって血液中の老廃物を濾過し、尿を作らなければいけなくなります。現在、人工透析となる原因で最も多いのが糖尿病性腎症です。
病状は急に進行するのではなく、段階を経て進行するため、できるだけ早期に診断し、できるだけ早期に適切な治療を開始することが重要です。

高血圧性腎硬化症

高血圧の状態が長く続くと、腎臓の血管に動脈硬化が生じます。動脈硬化によって血管の内腔が狭くなり、腎臓を流れる血液の量が減少し、腎臓が萎縮して硬くなることで、腎臓の機能が悪化します。現在、人工透析となる原因で2番目に多く、年々増加しています。生活習慣を改善し、適切な降圧薬を用いて血圧をコントロールすることで、腎臓の機能をできるだけ維持することが重要です。

糸球体腎炎

  • 腎臓の濾過装置である糸球体に炎症が生じることによって、蛋白尿や血尿が出る疾患を糸球体腎炎といい、急性糸球体腎炎と慢性糸球体腎炎の2種類があります。
  • 1)急性糸球体腎炎
    のどや皮膚の感染症に罹患した1~3週間後に、蛋白尿や血尿、尿量減少、むくみ、高血圧を発症する一過性の急性腎炎症候群です。小児や若年者に多い病気ですが、成人や高齢者も発症することがあります。治療は、腎機能が回復するまで、塩分、たんぱく質の摂取制限が行われます。また、急性期には溶連菌感染に対する抗菌薬の投与、むくみや高血圧に対しては降圧薬と利尿薬が使用されることもあります。ほとんどのケースで、後遺症が無く治癒します。
  • 2)慢性糸球体腎炎
    たんぱく尿や血尿が1年以上持続するものをいいます。免疫反応の異常によるものが多いと考えられており、たんぱく尿や血尿のほか、高血圧、めまい、肩こり、むくみ、頭痛、倦怠感などの症状が現れます。治療の基本は、抗血小板薬や抗凝固薬、降圧薬や利尿薬などによる薬物療法と、塩分制限・蛋白制限などの食事療法です。血圧のコントロールに努め、症状の悪化を防ぐことが重要で、また、競技スポーツなどの激しい運動や過労を避けるようにします。

ネフローゼ症候群

尿に蛋白がたくさん出てしまうために、血液中の蛋白が減り(低蛋白血症)、その結果、むくみや体重増加、体のだるさ、尿の泡立ちなどを生じる病気です。高度になると肺やお腹、さらに心臓や陰嚢にも水がたまります。また低蛋白血症によって、血液中のコレステロールが増えるため高脂血症となる危険性があり、その他、腎不全、血栓症(肺梗塞、心筋梗塞、脳梗塞など)、感染症などを合併する危険性があります。
ネフローゼ症候群の原因はさまざまであり、腎生検を含めた検査を行います。
治療は、むくみをコントロールする対症療法(安静・塩分制限・利尿薬)と原因に対する治療(ステロイド内服など)を行います。

多発性嚢胞腎

両方の腎臓にできた多発性の嚢胞が徐々に大きくなり、進行性に腎機能が低下する遺伝性の腎疾患です。高血圧、肝嚢胞、脳動脈瘤などの、全身の合併症もあり、その精査を行うことも大切です。
ほとんどが30~40歳代まで無症状で経過します。 多くは成人になってから発症し、70歳までに約半数が透析を必要とします。初発症状としては、外傷後の肉眼的血尿、腹痛・腰背部痛などを多く認めます。進行すると、大きくなった腎臓や肝臓を触れることがあり、腹部膨満感や食欲不振などを認めるようになります。高血圧もよくみられる症状で、健診で高血圧を指摘され、診断されることも少なくありません。
根本的治療がないため、腎臓の機能の保護を目的とした治療を行います。 ただ、体の中の水分が足りなくなると、尿を濃くするために出てくるホルモン(バソプレシン)によって嚢胞が大きくなるといわれていますので、尿路感染の予防も兼ねて、十分に水分を摂取することが大切です。また、バソプレシンの拮抗薬によって、腎臓の嚢胞が大きくなることを防ぎ、腎臓の機能が悪化するのを抑える効果が期待できます。
降圧薬はアンジオテンシン受容体拮抗薬を用います。

慢性腎臓病

  • eGFR値が60未満が3か月以上持続する場合を慢性腎臓病といいます。
    現在2,000万人(20歳以上の成人の5人に1人)の方が慢性腎臓病と推計されており、新たな国民病ともいわれています。生活習慣病(高血圧、糖尿病など)や、メタボリックシンドロームとの関連性が強く、心筋梗塞などの心血管病の合併の頻度が高く、また無症状のうちに腎機能が低下し、人工透析や腎移植を必要とすることも少なくないので注意が必要です。腎臓は体を正常な状態に保つ重要な役割を担っているため、慢性腎臓病によって腎機能が低下し続けると、様々な健康リスクが生じてきます。
  • 1)腎性高血圧
    高血圧の9割は、原因を特定することができない本態性高血圧です。一方、原因を特定できる高血圧を、二次性高血圧といいます。二次性高血圧の場合は、その原因を軽減あるいは取り除けば、高血圧を改善することが可能です。
    二次性高血圧のなかで最も多いのが腎性高血圧で、腎実質性高血圧と腎血管性高血圧の2種類があります。腎実質性高血圧とは、慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、多発性嚢胞腎などが原因となって腎障害を生じ、高血圧を引き起こしている場合です。腎血管性高血圧は、腎動脈が何らかの原因で狭くなり、腎臓から血圧を上昇させるホルモンの分泌が亢進する結果として発症します。
  • 2)腎性貧血
    腎臓はさまざまなホルモンを分泌しています。そのひとつに赤血球をつくる働きを促進するエリスロポエチンというホルモンがあります。腎臓の働きが低下するとエリスロポエチンの分泌が減少し、赤血球を作る働きが低下することで貧血になります。
  • 3)二次性(続発性)副甲状腺機能亢進症
    腎臓の働きが低下すると、副甲状腺のホルモンが過剰に分泌されることになり、骨の中のカルシウムが血液中に溶け出してしまうため、骨がもろくなります(骨粗鬆症)。また、過剰な副甲状腺ホルモンは、さまざまな場所にカルシウムを沈着させ、動脈硬化や心臓弁膜症・関節炎などを引き起こします。
  • 4)高カリウム血症
    カリウムは生体内で、細胞の浸透圧の維持や神経刺激の伝達、心臓の働きや筋肉の働きの調節を行っています。また、尿中へナトリウムイオンを排泄するため、高血圧を予防する効果もあります。
    高カリウム血症は、通常は尿中に排泄されるはずのカリウムが、腎臓の働きの低下や、脱水症などが原因となって体内に蓄積することで起こります。
    不整脈や筋力の低下、感覚障害などの自覚症状から検査して発見されることが一般的ですが、無症状の場合もあります。重症化すると血液透析になることもあるため、早期に適切な治療を受けることが大切です。

腎不全

  • 腎機能が低下して正常に働かなくなった状態で、急性腎障害と末期腎不全の2種類があります。
  • 1)急性腎障害
    何らかの原因によって腎臓の機能が急激に低下し、老廃物をうまく排泄できなくなった状態です。治療は、急性腎障害となった原因に対する治療と、腎不全から回復するまでの間の合併症の管理を行います。
  • 2)末期腎不全
    慢性腎臓病が徐々に悪化し、腎臓の機能は低下していきます。末期腎不全の段階に至ると、そのままでは生命を維持できなくなるため、腎臓の働きを補う腎代替療法(血液透析・腹膜透析・腎移植術)が必要になります。

腎臓の働きが
低下しているときの診察

いつから腎臓の働きが低下したのか、低下するスピードは平均的か、尿の異常はあったのか、異常があればいつからか、など経過を確認します。そして、腎臓の働きを低下させた原因を、血液検査や尿検査、画像診断を行って検索します。原因がわからないこともありますが、原因として多くみられる、糖尿病や高血圧、慢性糸球体腎炎などをきちんと診断し、治療を行うことで、腎臓の働きが低下するスピードを緩めることができます。

腎臓の働きが
低下しているときの治療

ゆっくりと腎臓の働きが低下することを、現在の医学では止めることができません。
腎臓の働きが60%未満になると低下するスピードが速くなるのは、残された腎臓の負担が増えるからだと考えられています。そのため、腎臓の負担をできるだけ減らすという治療が主になります。
腎臓は血管の塊の臓器です。そのため血管を保護することが腎臓を保護することになります。血管を保護するためには、高血圧・糖尿病・高脂血症・高尿酸血症の治療をきちんと行い、食事療法(塩分制限)や禁煙、適正体重の維持など生活習慣の改善が大切で、心臓や脳の病気を予防することにもつながります。
また、腎臓の働きが60%未満になると、貧血やカリウム・カルシウム・リンなどの電解質の異常、酸性・アルカリ性の調節障害などが出現することがあります。それぞれ適切に対応することで、腎臓の働きの維持し、腎臓以外の臓器への悪影響を予防するができます。

腎臓の働きが
低下しているときの注意

腎臓の働きが低下している場合には、お薬の注意がとても大切です。お薬は飲んだ後に、腎臓や肝臓で代謝され、体外に排泄されます。腎臓の働きが低下していると、お薬が腎臓から排泄されにくくなり、体にたまってしまうことで副作用につながってしまいます。また、腎臓の負担になってしまうお薬もあり、そのようなお薬はできるだけ使用しないことが大切です。

  • 量を減らさなければいけないお薬:抗菌薬、ガスターなどの胃薬、抗ウイルス薬など
  • 腎機能が低下すると使用してはいけないお薬:MRIの造影剤、一部の抗ヘルペス薬、一部の免疫抑制剤など
  • できるだけ避けたいお薬:一部の痛み止めや解熱剤、CTなどの造影剤、利尿剤など

他に注意していただきたいことに脱水症があります。心臓の働きにもよりますが、1L以上の水分を摂取することを勧めています。 心臓の働きは、腎臓にとってはとても大事です。心臓は、腎臓に血液を送り、腎臓でおしっこが作られることで余分な水分を排泄します。そのため、心臓の機能が低下すると、腎臓に流れる血液の量が減り、腎臓の働きが低下します。その結果、おしっこの量が減り、水分がたまって心臓の負担になってしまいます。

まとめ

  • 腎臓の働きの低下や血尿、蛋白尿を指摘された場合は、早めに当院を受診するようにしてください。
  • 腎臓の働きを低下させる、特に治療ができる病気を見落とさないようにしましょう。
  • 腎臓を、血管を保護するために生活習慣を改善し、腎臓を、血管を保護するための治療を積極的に受けるようにしましょう。
  • 腎臓に悪影響を及ぼすお薬や脱水症などに注意しましょう。
  • 無理をせずに継続すること、前向きでいることが大切です。