健康コラム
2026.08.20

前立腺はどこにある?位置・大きさ・役割と関連する病気を説明

「前立腺ってどこにあるの?」と聞かれて、正確に答えられる方は意外と多くありません。前立腺は男性だけにある臓器で、膀胱のすぐ下に位置し、排尿や生殖に深く関わっています。

この記事では、前立腺の正確な位置や大きさ、果たしている役割に加え、前立腺肥大症・前立腺がん・前立腺炎といった代表的な病気についても分かりやすく説明しています。   

前立腺はどこにある?正確な位置と周囲の臓器との関係

前立腺と周辺臓器の位置を示す図

膀胱のすぐ下、尿道を取り囲む位置にある

前立腺は膀胱の出口のすぐ下に位置し、尿道(尿の通り道)を360度取り囲むように存在しています。さらに、精子の通り道である精管も前立腺の内部で尿道と合流しています。

この位置関係がとても重要です。前立腺が大きくなると内側の尿道が圧迫されるため、「尿の勢いが弱くなる」「尿が出きらない」「夜中に何度もトイレに起きる」といった排尿トラブルが起こりやすくなります。

また、前立腺のすぐ後ろ側には直腸が接しています。このため、医師が肛門から指を入れて前立腺の状態を確認する「直腸診」が可能です。

体の表面からは触れない|直腸診で確認する理由

前立腺は骨盤の奥深くにあるため、お腹や太ももなど体の表面から触れることはできません。前立腺の大きさや硬さを直接確認できるのは直腸診だけです。

直腸診は前立腺肥大症や前立腺がんのスクリーニングとして広く行われている基本的な検査で、短時間で済むため体への負担も大きくありません。

前立腺の大きさ・形と構造

正常な大きさは栗の実ほど(約3〜4cm)

正常な前立腺の大きさはクルミや栗の実にたとえられることが多く、成人男性で約3〜4cm、重さ約20gほどです。形は栗を逆さにしたような形状をしています。

ただし、加齢とともに前立腺は大きくなる傾向があります。50歳を過ぎると肥大が始まる方が増え、なかにはミカン大やそれ以上にまで大きくなるケースもあります。

内腺と外腺|みかんのような層構造

前立腺の内部はみかんのような層構造になっています。大きく分けると、尿道を直接取り囲む「内腺(移行領域)」と、その外側にある「外腺(辺縁領域)」の2つです。

部位別名位置関連する病気
内腺移行領域尿道のすぐ周り(みかんの実にあたる部分)前立腺肥大症が発生しやすい
外腺辺縁領域前立腺の外側(みかんの皮にあたる部分)前立腺がんが発生しやすい

前立腺肥大症は内腺が大きくなる病気であり、前立腺がんは外腺から発生することが多いという違いがあります。このため、肥大症があるからといって、がんに変わるわけではありません。両者はまったく別の病気ですが、同時に起こることはあります。

前立腺の役割|排尿と生殖に関わる2つの働き

前立腺液の分泌と精子を守る役割

前立腺の主な働きは、前立腺液を分泌することです。前立腺液は精液の一部を構成しており、以下のような役割を担っています。

・精子に栄養を与え、運動機能を活発にする
・酸性の膣内で精子を保護する
(前立腺液はアルカリ性)
・射精時に前立腺が収縮して精液の射出を補助する

つまり、前立腺は男性の生殖機能に欠かせない臓器です。

排尿のコントロールに関わる仕組み

前立腺は尿道を取り囲んでいるため、排尿のコントロールにも関わっています。前立腺の筋肉組織(平滑筋)は尿道の開閉を調整する働きがあり、正常な状態では適切に排尿できるよう機能しています。

前立腺が肥大したり炎症を起こしたりすると、この排尿のコントロールがうまくいかなくなり、頻尿や尿の出にくさといった症状が現れます。

男性ホルモン(テストステロン)との関係

前立腺の成長や機能は男性ホルモン(テストステロン)によって維持されています。テストステロンの約95%は精巣で作られ、脳の下垂体からの指令でコントロールされています。

加齢によるホルモンバランスの変化が、前立腺肥大症や前立腺がんの発生にも深く関わっていると考えられています。

前立腺の位置が関係する3つの代表的な病気

前立腺に関連する病気には、主に前立腺肥大症・前立腺がん・前立腺炎の3つがあります。いずれも前立腺が膀胱直下で尿道を取り囲んでいるという位置関係が、症状の出方に大きく影響しています。

前立腺肥大症|尿道を圧迫し排尿トラブルの原因に

前立腺肥大症は、前立腺の内腺(移行領域)が加齢とともに大きくなることで尿道が圧迫され、排尿に支障が出る病気です。

組織学的な前立腺肥大は50歳代の男性の約50%、80歳以上では80%を超える方に見られると報告されています。(出典:MSDマニュアル プロフェッショナル版)ただし、肥大があっても自覚症状がない方も多くいます。

主な症状

・尿の勢いが弱くなる
・尿が出始めるまでに時間がかかる
・残尿感がある
・夜間に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)
・急に強い尿意を感じる

治療には薬物療法(α1遮断薬、5α還元酵素阻害薬など)のほか、症状が強い場合には手術が検討されます。

前立腺がん|日本人男性で最も多いがん

前立腺がんは主に外腺(辺縁領域)から発生するがんで、50歳以降に罹患率が急激に高まります

国立がん研究センターの統計によると、2023年のがん罹患数で男性の部位別第1位は前立腺がんです。(出典:日本対がん協会「がんの部位別統計」)食生活の欧米化・高齢化・PSA検査の普及などが増加の背景にあるとされています。

特徴

初期には自覚症状がほとんどない
・進行すると排尿困難、血尿、骨への転移による痛みなどが出る
・PSA(前立腺特異抗原)検査による早期発見が重要
・早期に発見できれば、多くの場合で治療による良好な経過が期待できる

前立腺肥大症とは発生する場所が異なるため、肥大症があるからといってがんになりやすいわけではありません

前立腺炎|若い世代にも起こる炎症

前立腺炎は、細菌感染やストレスなどが原因で前立腺に炎症が起こる病気です。前立腺肥大症や前立腺がんが中高年以降に多いのに対し、前立腺炎は20〜40歳代の比較的若い世代にも見られます

主な症状

・排尿時の痛みや不快感
・会陰部(股の付け根あたり)の鈍痛
・頻尿、残尿感
・射精時の痛み

急性の細菌性前立腺炎は抗菌薬で治療しますが、慢性化する場合もあり、長引く症状でお悩みの方は泌尿器科への相談をおすすめします。

3つの病気の比較

前立腺肥大症前立腺がん前立腺炎
好発年齢50歳以降50歳以降(70歳代がピーク)20〜40歳代にも多い
発生部位内腺(移行領域)外腺(辺縁領域)前立腺全体
主な症状排尿困難、夜間頻尿、残尿感初期は無症状、進行すると排尿障害・血尿排尿時の痛み、会陰部の不快感
原因加齢、ホルモン変化加齢、遺伝、食生活細菌感染、ストレスなど
受診の目安排尿トラブルが続くとき50歳以上は定期的なPSA検査痛みや違和感が続くとき

前立腺の病気についてもっと詳しく知りたい方は、「男性特有のお悩み」もぜひお読みください。

前立腺の異常に早く気づくための検査と受診の目安

PSA検査と直腸診の概要

前立腺の病気を早期に見つけるために行われる代表的な検査は、PSA検査直腸診の2つです。

PSA検査は、血液中の「前立腺特異抗原(PSA)」というたんぱく質の値を測定する検査です。PSA値が高い場合、前立腺がんや前立腺肥大症、前立腺炎などの可能性が考えられます。採血だけで済むため、体への負担が小さく、人間ドックや健康診断のオプションとして受けることもできます。

直腸診は、医師が肛門から指を入れて前立腺の大きさや硬さ、表面の状態を直接確認する検査です。PSA検査と組み合わせることで、より精度の高いスクリーニングが可能です。

こんな症状があれば泌尿器科へ

以下のような症状が気になる場合は、早めに泌尿器科を受診してください。

・尿の勢いが明らかに弱くなった
・夜間に2回以上トイレに起きることが増えた

・残尿感が続いている
・排尿時に痛みがある
・尿に血が混じる
・会陰部や下腹部に違和感・痛みがある

また、50歳以上の男性は自覚症状がなくても、年に1回のPSA検査を検討しましょう。前立腺がんは初期に症状が出にくいため、定期的な検査による早期発見が大切です。

まとめ

前立腺は膀胱のすぐ下にあり、尿道を取り囲むように位置する男性だけの臓器です。大きさは栗の実ほどで、前立腺液の分泌を通じて生殖機能を支えるとともに、排尿のコントロールにも関わっています。

加齢に伴い前立腺肥大症や前立腺がんのリスクが高まりますが、いずれも早めの検査と受診で適切に対応できます。排尿に関する気になる症状がある方、50歳以上でPSA検査をまだ受けていない方は、一度泌尿器科でご相談ください。

監修者

足立浩幸

足立 浩幸

院長 / 城東鶴見腎・泌尿器科クリニック/泌尿器科・腎臓内科

泌尿器科・人工透析・総合内科・救急科での豊富な診療経験を経て、2025年6月に大阪市城東区にて開業。排尿障害・尿失禁・性感染症・泌尿生殖器癌など幅広く対応し、患者一人ひとりに寄り添った丁寧な診療を提供している。