
「最近トイレが近い」「尿の勢いが弱くなった気がする」そんな変化を感じていませんか。前立腺肥大症は50歳以上の男性の多くに見られる病気ですが、初期の症状は年齢のせいだと見過ごされがちです。
この記事では、前立腺肥大症に見られる症状の特徴や、泌尿器科でも使われている症状チェックシートによるセルフチェックの方法、放置した場合のリスク、治療法、受診の目安まで説明しています。
前立腺肥大症とは?50歳以上の男性に多い病気
前立腺は膀胱の出口のすぐ下にあり、尿道を取り囲むように存在する男性だけの臓器です。この前立腺が加齢とともに大きくなり、尿道が圧迫されることで排尿にさまざまな支障が出る状態を前立腺肥大症といいます。
組織学的な前立腺の肥大は50歳代の男性の約50%、80歳以上では80%を超える方に見られると報告されています(出典:MSDマニュアル|プロフェッショナル版)。ただし、前立腺が大きくなっていても自覚症状がない方もいるため、「肥大=必ず治療が必要」というわけではありません。
命に直接関わることはほとんどありませんが、排尿トラブルは日常生活の質を大きく低下させます。「年のせい」と放置せず、症状に気づいた段階で泌尿器科を受診することが大切です。
こんな症状があればチェック|前立腺肥大症の主な症状
前立腺肥大症の症状は、大きく「排尿症状」「蓄尿症状」「排尿後症状」の3つに分けられます。
排尿症状|尿の勢いが弱い、途切れる、時間がかかる
肥大した前立腺が尿道を圧迫し、尿を出す動作そのものに支障が出る症状です。
- 尿の勢いが弱くなった
- 尿が途中で途切れる
- 排尿を始めるまでに時間がかかる
- 排尿に時間がかかる
蓄尿症状|トイレが近い、夜間に何度も起きる、急に我慢できなくなる
肥大した前立腺が膀胱を刺激し、尿を溜めておくことがうまくいかなくなる症状です。
- 日中のトイレの回数が増えた(頻尿)
- 夜間に2回以上トイレに起きる(夜間頻尿)
- 急に強い尿意を感じ、我慢しにくい(尿意切迫感)
排尿後症状|残尿感、尿が垂れる
排尿後症状は、排尿を終えた後にも不快感が残る症状です。
- 排尿後もスッキリしない(残尿感)
- 排尿後に尿が少し垂れてくる
前立腺肥大症の症状一覧
| 分類 | 主な症状 | 具体的な状態 |
| 排尿症状 | 尿勢低下、尿線途絶、排尿遅延 | 尿の勢いが弱い、途切れる、出始めに時間がかかる |
| 蓄尿症状 | 頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感 | トイレが近い、夜中に何度も起きる、急に我慢できない |
| 排尿後症状 | 残尿感、排尿後滴下 | スッキリしない、下着が濡れる |
これらの症状が1つでも気になり始めたら、次のセクションで紹介するセルフチェックを試してみてください。
症状チェックシートでセルフチェックしてみよう

国際前立腺症状スコア(IPSS)とは
前立腺肥大症の重症度を評価するために、世界共通で使われているチェックシートが「国際前立腺症状スコア」(IPSS:International Prostate Symptom Score)です。泌尿器科を受診すると、受付で渡されるアンケート用紙がこの質問票にあたります。
排尿に関する7つの質問に回答し、それぞれ0〜5点で点数をつけると、症状の重さを数値で把握できます。泌尿器科の診察では、この結果をもとに重症度や治療法の判断材料にしています。
※このチェックシートはあくまで受診の参考であり、医師の診察に代わるものではありません。点数にかかわらず、気になる症状がある方は早めに泌尿器科へご相談ください。
7つの質問項目と点数の付け方
国際前立腺症状スコアでは、「この1か月間に、次のような症状がどのくらいの頻度でありましたか」という形式で7つの質問に答えます。質問の内容は以下のとおりです。
| 質問番号 | 質問の内容 |
| ① | 排尿後にまだ尿が残っている感じがあったか(残尿感) |
| ② | 排尿してから2時間以内にもう一度行きたくなったか(頻尿) |
| ③ | 排尿の途中で尿が途切れたことがあったか(尿線途絶) |
| ④ | 尿を我慢するのが難しかったか(尿意切迫感) |
| ⑤ | 尿の勢いが弱いと感じたか(尿勢低下) |
| ⑥ | 排尿を始めるためにお腹に力を入れたか(腹圧排尿) |
| ⑦ | 夜寝てから朝起きるまでに何回トイレに起きたか(夜間頻尿) |
それぞれの質問に対し、「まったくない(0点)」から「ほぼ毎回(5点)」までの6段階で回答し、7問の合計点を算出します(⑦のみ回数で0〜5点)。
質問①~⑥の回答点数
0点・・・まったくない
1点・・・まれに(5回に1回未満)
2点・・・たまに(2回に1回未満)
3点・・・時々 (2回に1回)
4点・・・しばしば(2回に1回以上)
5点・・・ほぼ毎回
出典:日本泌尿器科学会「男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン」
合計点の見方|軽症・中等症・重症の目安
| 合計点 | 重症度の目安 | 一般的な対応の方向性 |
| 0〜7点 | 軽症 | 経過観察、生活習慣の見直し |
| 8〜19点 | 中等症 | 薬物療法の検討、泌尿器科への相談 |
| 20〜35点 | 重症 | 薬物療法や手術療法の検討 |
8点以上であれば、適切な治療によって症状が改善する可能性があります。「まだ大丈夫」と感じていても、一度泌尿器科で相談してみることをおすすめします。
QOLスコア(満足度)もあわせて確認
国際前立腺症状スコアにはもう1つ、排尿の状態にどのくらい満足しているかを確認する「QOLスコア」が付いています。「とても満足(0点)」から「とてもいやだ(6点)」の7段階で答えます。
| Q:今の排尿状態がこのまま一生続くとしたら、どう感じますか? |
0点・・・とても満足
1点・・・満足
2点・・・ほぼ満足
3点・・・なんとも言えない
4点・・・やや不満
5点・・・いやだ
6点・・・とてもいやだ
合計点では軽症に分類されても、QOLスコアで不満度が高い場合は治療を検討することがあります。症状の数値だけでなく、ご自身の生活への影響も含めて判断することが大切です。
放置するとどうなる?前立腺肥大症が進行したときのリスク
尿閉|尿がまったく出なくなる
前立腺肥大症を放置して症状が進行すると、最も深刻なのが尿閉です。尿閉とは膀胱に尿が溜まっているのに排尿できなくなる緊急の状態で、下腹部の強い張りや激しい痛みを伴います。
尿閉はある日突然起こることがあり、長時間座りっぱなしでいたとき、飲酒後、体が冷えたときなどがきっかけになりやすいとされています。また、市販の風邪薬に含まれる抗ヒスタミン薬(抗コリン作用のある成分)が引き金になることも知られており、前立腺肥大症がある方は市販薬の使用にも注意が必要です。
血尿・尿路感染・腎機能への影響
尿閉以外にも、前立腺肥大症の進行に伴い以下のような合併症が起こることがあります。
・血尿:前立腺部の尿道粘膜が充血し、出血することがある
・尿路感染症:残尿が多くなると膀胱内に細菌が繁殖しやすくなる
・溢流性(いつりゅうせい)尿失禁:膀胱がいっぱいになり、尿が少しずつ漏れ出す状態
・腎機能の低下:残尿が長期間続くと、尿が腎臓まで逆流し腎臓に負担がかかる
- 血尿:前立腺部の尿道粘膜が充血し、出血することがある
- 尿路感染症:残尿が多くなると膀胱内に細菌が繁殖しやすくなる
- 溢流性(いつりゅうせい)尿失禁:膀胱がいっぱいになり、尿が少しずつ漏れ出す状態
- 腎機能の低下:残尿が長期間続くと、尿が腎臓まで逆流し腎臓に負担がかかる
このように、排尿トラブルを「生活の不便」だけで済まさず、早めに対処することが重要です。
前立腺肥大症の原因

加齢と男性ホルモンの変化
前立腺肥大症の正確な発症メカニズムはまだ完全には解明されていませんが、加齢と男性ホルモン(テストステロン)のバランスの変化が深く関わっていると考えられています。
前立腺の成長には男性ホルモンが必要ですが、年齢を重ねるとホルモンバランスが変化し、前立腺の内腺が増殖しやすくなります。このため、前立腺肥大症は30歳代頃から徐々に始まり、50歳を過ぎると自覚症状として現れやすくなります。
生活習慣病との関連
近年の研究では、肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病が前立腺肥大症のリスクを高める可能性が指摘されています。食生活の欧米化(動物性脂肪の多い食事)も背景の一つと考えられており、バランスのよい食事や適度な運動は前立腺の健康維持にも役立ちます。
前立腺肥大症の治療法
薬物療法(α1遮断薬・5α還元酵素阻害薬など)
前立腺肥大症の治療は、まず薬物療法から始めることが一般的です。
・α1遮断薬:前立腺や尿道の筋肉の緊張を和らげて尿を出やすくする薬。比較的早く効果が現れやすく、最初に処方されることが多い
・5α還元酵素阻害薬:男性ホルモンの作用を抑え、肥大した前立腺を徐々に小さくする薬。効果が出るまでに数か月かかる
・PDE5阻害薬:前立腺や膀胱の血流を改善し、排尿症状を緩和する薬
・植物製剤・漢方薬:炎症を抑え、排尿症状を和らげる補助的な薬
症状の進行度に応じて、これらの薬を単独または組み合わせて使用します。
磁気刺激治療「スターフォーマー」|頻尿・尿もれの改善に
前立腺肥大症に伴う頻尿や尿もれ(蓄尿症状)に対しては、骨盤底筋を強化する磁気刺激治療「スターフォーマー」という選択肢もあります。高強度の磁気刺激により骨盤底筋や尿道括約筋の収縮運動を促し、排尿のコントロール機能の改善が期待できます。
着衣のまま椅子に座るだけで施術が受けられ、痛みがないのが特徴です。当院でも受診可能ですので、気になる方はぜひお問い合わせください。
👉 スターフォーマーについて詳しく見る
手術療法
薬物療法で十分な改善が得られない場合や、尿閉を繰り返す場合には手術が検討されます。代表的な方法は、尿道から内視鏡を入れて肥大した前立腺組織を切除する経尿道的前立腺切除術(TURP)です。近年はレーザーを用いた手術など、体への負担が小さい方法も選べるようになっています。
治療法の比較
| 治療法 | 特徴 | 適応の目安 |
| 薬物療法 | 通院で服薬、比較的早く効果が出やすい | 軽症〜中等症 |
| 磁気刺激治療(スターフォーマー) | 着衣のまま座るだけ、痛みなし、頻尿・尿もれに | 頻尿・尿もれなどの蓄尿症状 |
| 手術療法 | 内視鏡手術が主流、根本的な改善が期待できる | 薬物療法で改善しない重症例 |
何科を受診すればいい?受診の目安
前立腺肥大症が疑われる場合の受診先は泌尿器科です。以下のような状態に当てはまる方は、早めの受診をおすすめします。
・夜間にトイレで2回以上起きる日が続いている
・尿の勢いが以前に比べて明らかに弱くなった
・残尿感がなかなか解消されない
・セルフチェックの合計点が8点以上だった
・排尿のことで日常生活に不便を感じている
「恥ずかしい」と感じる方もいるかもしれませんが、泌尿器科は排尿に関する悩みを専門的に扱う診療科です。問診と簡単な検査で現在の状態を確認できますので、気になった時点でまず相談してみてください。
まとめ
前立腺肥大症は50歳以上の男性にとって身近な病気であり、排尿の勢いの低下や頻尿、夜間頻尿、残尿感といった症状が特徴です。国際前立腺症状スコアを使ったセルフチェックは、ご自身の症状の程度を把握するのに役立ちます。
合計点が8点以上であった方はもちろん、点数にかかわらず排尿に関する悩みがある方は、泌尿器科への受診を検討してください。放置すると尿閉や感染症など深刻な合併症につながる可能性もあります。早めの相談と適切な治療で、日常生活の快適さを取り戻しましょう。
「トイレの悩みは歳のせい」とあきらめていませんか?
排尿の気になる変化、まずは当院にお聞かせください。
スターフォーマーは自由診療(保険適用外)です。施術費用の目安は1回8,000円〜(お試し1回5,000円、通常価格・コース料金は公式ページをご参照ください)、1コースは週2回×4週間(計8回)が目安です。まれに軽い筋肉痛のような症状が出ることがあります。
また、体内にペースメーカーや金属インプラントが入っている方、妊娠中の方などは施術を受けられない場合がありますので、事前に医師にご相談ください。
なお、スターフォーマー(FOTONA社製)は、日本国内で薬機法上の承認を受けていない医療機器です。米国FDA(食品医薬品局)の認可、およびEU(欧州連合)での医療機器認証(CEマーキング)を取得しています。当院では医師の判断のもと、個人輸入により導入し、自由診療として提供しております。効果には個人差があり、主なリスク・副作用については診察時に医師が十分にご説明します。
監修者
足立 浩幸
院長 / 城東鶴見腎・泌尿器科クリニック/泌尿器科・腎臓内科
泌尿器科・人工透析・総合内科・救急科での豊富な診療経験を経て、2025年6月に大阪市城東区にて開業。排尿障害・尿失禁・性感染症・泌尿生殖器癌など幅広く対応し、患者一人ひとりに寄り添った丁寧な診療を提供している。

