
「トイレに行っても尿がなかなか出ない」「出るまでに時間がかかる」こうした排尿の悩みは男性に多いイメージがあるかもしれませんが、実は女性にも起こります。恥ずかしさから相談できずにいる方や、何科に行けばいいのかわからず受診をためらっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、女性の「尿が出にくい」症状について、考えられる原因から受診先、検査・治療の流れまでをまとめました。
「尿が出にくい」は男性だけの症状ではありません

排尿困難というと前立腺肥大症のイメージが強く、「男性の病気」と思われがちですが、女性にも排尿が困難になるケースがあります。
女性の場合は骨盤臓器脱や神経のトラブル、薬の影響などが原因であることも。「まさか自分が」と思う方も多いのですが、加齢や出産をきっかけに症状が出ることは珍しくありません。
女性の排尿困難でよくみられる症状には、次のようなものがあります。
・トイレに座ってから尿が出始めるまでに時間がかかる
・お腹に力を入れないと尿が出にくい
・尿の勢いが弱い、途中で途切れる
・残尿感がある(出し切れていない感じがする)
こうした症状が続いている場合は、一度原因を調べておくと安心です。
女性に多い原因

女性特有の体の構造に関わる原因がいくつかあります。
骨盤臓器脱
出産や加齢によって骨盤底の筋肉や靭帯がゆるみ、膀胱・子宮・直腸などが膣から下がってくる状態です。膀胱が下がると尿道が折れ曲がるような形になり、尿が出にくくなることがあります。「下腹部に何かが降りてくる感じがする」「入浴時にふくらみに触れる」といった自覚症状を伴うこともあります。
尿道の異常
尿道カルンクル(尿道口にできる良性のできもの)や、まれに尿道の狭窄が排尿困難の原因になることがあります。尿道カルンクルは閉経後の女性に多く、出血や痛みを伴う場合は治療の対象です。
婦人科手術後の影響
子宮や卵巣の手術の際に、膀胱の働きに関わる神経が影響を受け、術後に尿が出にくくなるケースがあります。多くは一時的なものですが、症状が長引く場合は泌尿器科での評価が必要です。
男女共通の原因
女性特有の原因のほかに、性別を問わず起こりうる原因もあります。
| 原因 | 特徴 |
| 神経因性膀胱 | 糖尿病や脊髄の病気などで膀胱の神経がうまく働かなくなり、尿を押し出す力が弱くなる |
| 膀胱炎 | 炎症によって膀胱がうまく収縮できず、排尿しにくくなることがある |
| 便秘 | 直腸にたまった硬い便が尿道を圧迫し、尿の通りが悪くなる |
| 薬の副作用 | 風邪薬・抗アレルギー薬・抗うつ薬などに含まれる成分が膀胱の収縮を抑えることがある |
薬の副作用による排尿困難は意外に多く、市販の風邪薬に含まれる成分でも起こりえます。新しい薬を飲み始めてから尿が出にくくなった場合は、処方医や薬剤師に相談してください。
放置するとどうなる?
「そのうち治るかも」と様子を見続ける方もいますが、排尿困難を長く放置すると二次的なトラブルにつながることがあります。
排尿のたびに膀胱内に尿が残る状態(残尿)が続くと、細菌が繁殖しやすくなり膀胱炎を繰り返す原因になります。さらに残尿量が増えると膀胱が過度に引き伸ばされて収縮力が低下し、自力で尿を出すことがますます難しくなるという悪循環に陥ることもあります。
まれではありますが、膀胱にたまった尿の圧力が腎臓側に及ぶと「水腎症」を引き起こし、腎機能に影響を与えるケースもあるため、症状が続いている場合は早めに受診しておくことが大切ですよ。
何科を受診すればいい?

「尿が出にくい」で受診する場合、最も適しているのは泌尿器科です。
「泌尿器科は男性が行くところ」というイメージを持たれる方もいらっしゃいますが、女性の排尿トラブルも泌尿器科の専門領域です。問診・尿検査・残尿測定など、排尿に関する検査をひと通り受けることができます。
骨盤臓器脱が疑われる場合は、泌尿器科と婦人科のどちらでも相談できますが、排尿の症状がメインであれば泌尿器科を受診するとスムーズです。
当院でも女性の患者さまに安心して受診いただけるよう配慮しております。気になる症状があればお気軽にご相談ください。
当院の受診について詳しく知りたい方は、排尿のお悩み(症状診断)ページもあわせてご覧ください。
受診時の検査と治療
泌尿器科では、まず問診と基本的な検査で原因を絞り込みます。
主な検査
| 検査 | 内容 |
| 尿検査 | 感染や血尿の有無を調べる |
| 残尿測定(超音波) | 排尿後に膀胱に残っている尿の量を確認する |
| 尿流量測定 | 尿の勢いや排尿パターンを客観的に記録する |
| 超音波検査(腹部・腎臓) | 膀胱や腎臓の形態を確認し、水腎症などがないかを調べる |
いずれも痛みの少ない検査です。必要に応じて、さらに詳しい検査を行う場合もあります。
主な治療法
原因に応じて、以下のような治療が行われます。
| 原因 | 主な治療 |
| 骨盤臓器脱 | ペッサリー(膣内リング)の装着、骨盤底筋トレーニング、手術 |
| 神経因性膀胱 | 薬物療法(膀胱の収縮を助ける薬)、自己導尿指導 |
| 薬の副作用 | 原因薬の変更・中止を処方医と相談 |
| 膀胱炎 | 抗菌薬による治療 |
| 便秘が原因 | 便秘の改善(生活習慣の見直し、緩下剤など) |
軽度の骨盤臓器脱であれば、骨盤底筋トレーニングで症状が改善するケースもあります。肛門・膣・尿道のあたりをキュッと締め、5秒ほどキープしてからゆっくり力を抜く動作を繰り返すトレーニングで、自宅で取り組むことができます。
関連記事:骨盤底筋トレーニングのやり方と効果|女性の尿もれ・頻尿改善法
まとめ
「尿が出にくい」という症状は女性にも起こりえるもので、骨盤臓器脱・神経因性膀胱・薬の副作用・便秘など、さまざまな原因が考えられます。放置すると膀胱炎の繰り返しや腎機能への影響につながることもあるため、症状が続いている場合は泌尿器科への相談をおすすめします。
当院でも女性の排尿トラブルに対応しておりますので、気になることがあればお気軽にご相談ください。
「尿が出にくいけど、どこに相談すればいいかわからない」
女性の排尿の悩みも泌尿器科で相談できます。
監修者
足立 浩幸
院長 / 城東鶴見腎・泌尿器科クリニック/泌尿器科・腎臓内科
泌尿器科・人工透析・総合内科・救急科での豊富な診療経験を経て、2025年6月に大阪市城東区にて開業。排尿障害・尿失禁・性感染症・泌尿生殖器癌など幅広く対応し、患者一人ひとりに寄り添った丁寧な診療を提供している。

