泌尿器の悪性腫瘍のお悩み

こんなお悩みは
ありませんか?

腎臓がん

腎臓がんは、腎臓の細胞ががん化したものです。
2019年に日本全国で腎臓がんと診断されたのは21,347例でした。
肥満・喫煙・高血圧・腎疾患(血液透析中)・ウイルス性肝炎などが、腎がんの発症の危険因子と考えられています。

腎臓がんの症状

  • 血尿:
    がんが尿の通り道まで進展すると認められます
  • 腫瘤:
    がんが大きくなると、皮膚の上から腫瘤を触れることができるようになります
  • 疼痛:
    腰痛や転移した場合には、強い痛みを認めることがあります。
  • 進行すると発熱や貧血を認めることもあります。
    最近では、検診やほかの疾患の検査で、偶然早期に無症状で見つかることが増えてきました。

腎臓がんの検査

腎臓がんは多くの場合、超音波検査やCT検査で見つかりますが、確定検査のためには造影CT検査が必要です。画像検査で診断できない場合には、必要に応じて生検を行うこともあります。

腎臓がんの治療

腎臓がんの治療には、手術、凍結療法、薬物療法、放射線治療、監視療法などがあります。できる限り手術でがんを取り除きますが、手術が難しい場合には薬物療法や放射線治療などを行います。また、がんに伴う心と体のつらさを和らげるための緩和ケア/支持療法を受けることができます。

腎盂・尿管がん

腎盂にできるがんを腎盂がん、尿管にできるがんを尿管がんといいます。この2つは同じ組織型(がんの種類)であり治療法が同じであるため、まとめて腎盂・尿管がんとして治療することが一般的です。
2019年に日本全国で腎盂・尿管がんと診断されたのは、8,823例でした。

腎盂・尿管がんの危険因子

最も影響があるのは喫煙です。喫煙者は非喫煙者の約3倍の危険性があり、長期間の喫煙により、危険性が7.2倍に増加すると報告されています。
また、尿路結石や尿路の閉塞に伴う慢性細菌性感染も危険因子と考えられています。

腎盂尿管がんの症状

主な症状は、無症候性肉眼的血尿(無症状なのに、目でみてわかる血尿が出ること)です。75%以上の方に血尿を認めるといわれています。
血尿以外の症状として、腫瘍や血の塊によって尿管が閉塞し、水腎症(停滞した尿のために腎臓が腫れる状態)となることがあります。

腎盂尿管がんの検査

尿検査、CT検査、膀胱鏡検査、逆行性尿路造影、選択的尿細胞診、尿管鏡検査などを行います。

腎盂尿管がんの治療

手術療法と薬物療法が中心です。また、がんに伴う心と体のつらさを和らげるための緩和ケア/支持療法を受けることができます。

膀胱がん

膀胱は尿を貯める袋状の臓器ですが、膀胱がんとはこの粘膜に発生するがんのことをいいます。膀胱がんの80%は粘膜内でとどまる表在性のものですが、膀胱を超えて広がり、リンパ節やほかの臓器に転移をする場合もあります。
2020年に日本全国で膀胱がんと診断されたのは、23,185例(男性:17,424例、女性:5,761例)でした。男性は女性の約3倍の発生率といわれています。

膀胱がんの危険因子

喫煙者は非喫煙者の2~3倍の発生率といわれています。歴史的には染料を扱う職業に多く発症したことが知られています。
また、長期間の膀胱カテーテル留置や骨盤内への放射線照射も関与しているといわれています。

膀胱がんの症状

肉眼的血尿がよくみられる症状ですが、膀胱炎や尿路結石症も同じ症状のため区別がとても重要です。膀胱がんは、膀胱炎や尿路結石症と異なり痛みを伴わないことが特徴といわれていますが、膀胱炎の併発や、腫瘍部に結石ができることがあるため、頻回に膀胱炎を繰り返す場合には検査が必要です。

膀胱がんの検査

まず尿検査を行い、尿の中に血液やがん細胞が含まれていないかを確認します。さらに、超音波検査や膀胱鏡検査を行い、がんであることが分かった場合には、がんの広がりを調べるためにCT検査やMRI検査などの画像検査を行います。確定診断のためには、治療を兼ねた経尿道的膀胱腫瘍切除術を行います。

膀胱がんの治療

まず初めに診断と治療をかねて経尿道的膀胱腫瘍切除術を行い、治療法を検討します。治療法には、このほかに、薬剤を膀胱内に注入する膀胱内注入療法や、膀胱全摘除術、薬物療法などがあります。また、がんに伴う心と体のつらさを和らげるための緩和ケア/支持療法を受けることができます。

前立腺がん

前立腺がんとは、前立腺という男性の生殖器の細胞ががん化してしまうことです。
日本においても、ライフスタイルや食事が欧米化したことや、検査技術が向上したため、年々前立腺がんと診断される男性が増加しています。

  • ・1975年には約2,000人だったものが、2000年には約23,000人、そして2020年には87,756人と大幅に増加しています。
  • ・この増加は、食生活の欧米化や環境因子などが影響していると推定されていますが、具体的な原因は明確ではありません。

前立腺がんの危険因子

前立腺がんの家族歴(家族や血縁者に前立腺がんにかかった人がいる)、高年齢が明らかにされています。その他にも肥満、食品(カルシウムの過剰摂取など)、喫煙などがいわれていますが、まだ明らかではありません。

前立腺がんの症状

前立腺がんは、初期にはほとんど自覚症状はありません。『トイレが近い』や『尿が出にくい』などの前立腺肥大症に似た症状が現れ、泌尿器科を受診した時に発見されることが多くあります。症状が出てからでは進行していることが一般的で、さらに進行し、骨に転移すると腰痛を感じたり歩行困難になったりします。

前立腺がんの検査

採血をしてPSA値(前立腺特異抗原)を調べるほか、肛門に指を入れ前立腺を触診し硬さを調べる直腸診や、超音波検査を行います。
これらの検査でがんが疑われた場合は、前立腺生検が行われます。その結果、前立腺がんと診断がついた場合は、画像検査を行い、がんの進行度や転移の有無などを評価します。

前立腺がんの治療

  • 1)転移がない場合の治療法

    手術療法、放射線療法、監視療法(非常に早期で発見された悪性度の低いがんの場合は、PSA値の上昇、症状の出現や悪化などを経過観察する方法)などがあります。

  • 2)転移がある場合の治療法

    ホルモン療法、化学療法、ラジウム223による骨転移の治療、BRCA遺伝子変異のある方へのオラパリブ投与などが保険で承認されています。
    食生活の欧米化が関与しているといわれていることから、肉類や乳製品の過剰摂取を控え、バランスの良い食事をとるように心がけるようにしましょう。また、親や兄弟に前立腺がんの方がいる人はリスクが高まるため、50歳を超えたら定期的にPSA検査を受けることをお薦めいたします。

精巣がん

精巣内には、男性ホルモンを作るライディッヒ細胞、精子を作るもととなる精母細胞などがありますが、精巣に発生するがんの多くが、精母細胞から発生するものです。精巣がんは精巣内の生殖細胞から発生する胚細胞腫瘍(はいさいぼうしゅよう)であるため、さまざまな病理組織像がみられます。
精巣がんは大きく分けて、セミノーマ(精上皮腫)と非セミノーマがありますが、後者のほうが転移しやすく、悪性の経過をとりやすいといわれています。
精巣がんにかかる割合は10万人に1人程度といわれ、比較的まれながんです。しかし、20歳~30歳代の男性がかかる固形がん(白血病などの血液腫瘍以外のがん)としては最も多く、若年者に多いという特徴があります。

精巣がんの危険因子

次のような方は精巣がんになりやすい、といわれています


  • 過去に停留精巣になったことがある
  • ご家族に精巣がんになった人がいる
  • 過去に精巣がんになったことがある

精巣がんの症状

初期症状はほとんどなく、精巣に痛みのないしこりができたり、精巣が腫れたりして、発見されることがほとんどです。下腹部の重圧感や鈍痛(30~40%)、急性の精巣痛(10%)がみられることもあります。
精巣がんは進行が早く、比較的早い時期に転移するため、転移による症状(腹痛、腰痛、呼吸困難、首のリンパ節の腫れなど)で気づく場合もあります。また、ホルモンの影響により、乳首の痛みや腫れが起こることもあります。
こうした症状はかなり進行してからでないとあらわれないため、青・壮年期の男性の方は、ふだんから入浴時に自分で触ってしこりがないか確認するなど、自己検診をおすすめします。

精巣がんの検査

まず、触診で精巣を触れ、しこりや腫れを確認します。その後、超音波検査で精巣内の様子を詳しく観察しますが、診断が難しい場合はMRI検査なども追加します。
また、血液検査(腫瘍マーカー)も重要な検査で、がんの種類や性質を知る目安としてだけではなく、治療の効果判定、経過観察にも用いられます。
診断が確定したら、他臓器に転移がないか、CT検査などで調べます。精巣がんは転移のおそれがあるため、基本的に手術前に組織検査(生検)を行うことはありません。

精巣がんの治療

まず精巣の摘出手術を行い、病理検査によってセミノーマか非セミノーマかを診断します。
その後の治療法は、セミノーマと非セミノーマ、病期などによって異なります。

  • 1)セミノーマの治療

    早期では手術を行い、その後は経過観察を行います。
    進行している場合には抗癌剤を追加で使用することがあります。
    他に転移を認める場合にはその状態に応じて放射線療法および抗癌剤治療を行います。

  • 2)非セミノーマの治療

    早期で精巣内の血管の中にがんを認めない場合は経過観察を行います。しかし、精巣内の血管などに少しでもがんを認める場合は抗癌剤治療を追加します。
    精巣がんの治療は、手術、放射線、抗癌剤など多岐に渡ることがありますが、正しい治療を行えば、治る可能性が高いがんです。
    また、精巣がんは若い方に多く、今後、挙児希望となる方が多いため、積極的に精子保存を行ったほうが良いと思われます。