健康コラム
2026.08.20

前立腺を取ったらどうなる?術後の体の変化と回復までの流れ

「前立腺がんと診断されたけれど、前立腺を取ったら体はどうなるの?」手術を検討している方にとって、術後の生活がどう変わるのかは気になるところです。前立腺全摘除術は前立腺がんの根治を目指す有効な治療法ですが、排尿や性機能に影響が出る可能性があります。

この記事では、手術で何を取るのか、術後にどんな変化が起きるのか、回復までの流れや対策まで分かりやすく説明します。 

前立腺全摘除術とは?どんな手術なのか  

前立腺・精嚢・精管を取り除く手術

前立腺全摘除術は、前立腺がんの根治(がんを完全に取り除くこと)を目指す手術です。前立腺だけでなく、精液を溜める精嚢や、精子の通り道である精管の一部も一緒に切除します。がんの広がりに応じて、前立腺周囲のリンパ節を同時に切除する場合もあります。

前立腺を取り除いた後は、膀胱と尿道を直接つなぎ合わせ(吻合)、尿の通り道を再建します。

手術が適応になる方

前立腺全摘除術が検討されるのは、主に以下のような場合です。

・前立腺がんが前立腺の中にとどまっている(遠隔転移がない)
・年齢や体の状態を考慮して10年以上の余命が見込まれる
・全身麻酔に耐えられる体力がある

手術で根治できれば、術後に再発しても放射線療法やホルモン療法といった次の治療法を温存できるメリットがあり、前立腺がん治療において最初に行われることが多い選択肢です。

手術の方法|3つの術式の違い

※一般的なロボット支援手術に使われる機器のイメージ

現在、前立腺全摘除術には主に3つの方法があります。

術式特徴入院期間の目安
開腹手術下腹部を約10cm切開。出血量が多くなりやすい2〜3週間程度
腹腔鏡手術数か所の小さな穴から器具を入れて行う。出血が少ない1〜2週間程度
ロボット支援手術(ダヴィンチ)ロボットアームによる精密な操作。出血・痛みが少なく、神経温存もしやすい1〜2週間程度

近年はロボット支援手術(ダヴィンチ手術)が主流となってきました。2012年に保険適用となり、拡大視野と精密な操作ができるため、出血量の低減や術後の機能温存で優れた結果が報告されています。

前立腺を取った後の体の変化

前立腺全摘除術を受けた後、体にはいくつかの変化が生じます。主なものは「尿もれ」「勃起への影響」「射精ができなくなる」の3つです。

尿もれ(尿失禁)|術後に最も多い変化

前立腺の下には尿道を締める外尿道括約筋がありますが、手術によってこの括約筋や周囲の組織にダメージが生じると、尿もれ(尿失禁)が起こります。術後すぐは、ほぼすべての方に何らかの尿もれが見られます。

回復の目安

術後1〜3か月:徐々に尿もれの量が減っていく
術後3〜6か月:多くの方が日常生活に支障ない程度まで回復
術後1年:大部分の方が尿もれをほとんど気にならないレベルまで改善

ただし個人差が大きく、術後半年〜1年を過ぎても尿もれが続く方もいます。国立がん研究センターによると、術後の尿失禁は約9割の方が骨盤底筋トレーニングや薬による治療で術後1年程度のうちに改善しますが、約1割の方は尿失禁が残存するとされています。

(出典:国立がん研究センター|再生医療で前立腺がんの術後合併症の克服を目指す⦅2023年8月31日⦆

勃起機能への影響(ED)

前立腺の両脇には勃起に関わる神経(海綿体神経)が走っています。手術で前立腺を取り除く際にこの神経が傷つくと、勃起障害(ED)が起こることがあります

がんの状態によっては、神経を残す「神経温存手術」が行われることがありますが、すべての方に適応できるわけではありません。高リスクのがんでは、がんを確実に取り除くために神経も一緒に切除する必要があります。

神経温存手術を行った場合でも、勃起機能が回復するまでには3〜12か月以上かかることが多く、PDE5阻害薬(バイアグラ等)を使ったリハビリテーションが行われる場合があります。

射精ができなくなる

前立腺全摘除術では精嚢と精管の一部も切除するため、術後は射精ができなくなります。これは術式にかかわらず避けられない変化です。

なお、勃起と射精は別の仕組みで起こるため、射精ができなくなっても、神経温存手術が成功した場合には勃起は可能な場合があります。またオルガスム(絶頂感)についても残る方と変化する方がいますが、術前に予測することは困難です。

術後の変化まとめ

変化原因回復の見通し
尿もれ尿道括約筋へのダメージ多くは3〜6か月で改善、1年で大部分が回復
勃起障害(ED)海綿体神経の損傷神経温存の場合3〜12か月以上。回復しない場合もある
射精不能精嚢・精管の切除回復しない(不可逆的な変化)

尿もれの対策|骨盤底筋トレーニングと磁気刺激治療

骨盤底筋トレーニングが最も重要

術後の尿もれ改善において最も効果が期待できるのが骨盤底筋トレーニングです。外尿道括約筋やその周囲の筋肉を意識的に鍛えることで、尿道の締まりを回復させます。

ポイント

・術後早期から正しい方法で始めることが大切
・「肛門を締める」だけでは不十分で、尿道を締める意識が重要
・1日数回、継続して行う

自己流ではうまく筋肉を使えていないこともあるため、泌尿器科でやり方を指導してもらうことをおすすめします。

磁気刺激治療「スターフォーマー」による骨盤底筋リハビリ

骨盤底筋トレーニングを自分だけで正しく続けるのは難しいと感じる方もいます。そうした場合には、高強度の磁気刺激によって骨盤底筋の収縮運動を促す「スターフォーマー」も選択肢の一つです。

着衣のまま椅子に座るだけで施術が受けられ、自力では動かしにくい深部の筋肉にもアプローチできるのが特徴です。骨盤底筋トレーニングとの併用で、尿もれの改善を目指します。当院でも受診可能ですので、お気軽にご相談ください。

スターフォーマーの施術費用や治療の詳細は、以下のページで紹介しています。
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術後の再発について|PSA値の経過観察

前立腺全摘除術で前立腺を取り除くと、前立腺だけで作られるPSA(前立腺特異抗原)の値はほぼゼロになります。術後は定期的にPSA検査を行い、再発の有無を確認します。

PSA再発の基準は一般的にPSA値が0.2ng/mLを2回以上超えた場合とされています。手術後に再発が起こる可能性もありますが、再発した場合でも放射線療法やホルモン療法による治療が可能です。

術後は8〜10年にわたり定期的なPSA検査を続けることになります。安定していれば半年に1回程度の通院で済みますので、焦らず長期的に経過を見ていくことが大切ですよ。

入院から退院後までの流れ

ここでは、現在主流であるロボット支援手術の場合の一般的な流れを紹介します。

時期内容
手術前日入院、術前検査
手術当日全身麻酔で手術(約3〜5時間)。術後は尿道カテーテルを留置
術後1〜2日歩行開始。痛みは開腹手術より少ないことが多い
術後6〜7日膀胱と尿道のつなぎ目の回復を確認し、尿道カテーテルを抜去
術後1〜2週間排尿状態を確認して退院
退院後2週間後に外来受診。病理検査結果の説明。その後は定期的にPSA検査

退院後は、重いものを持つ動作や激しい運動は1か月ほど控えるのが一般的です。デスクワークであれば退院後2〜3週間で復帰できる方が多いですが、体力の回復には個人差があります。

まとめ

前立腺全摘除術は前立腺がんの根治を目指す有効な手術ですが、術後には尿もれ・勃起障害・射精不能といった体の変化が起こり得ます。特に尿もれについては、多くの方が術後3〜6か月で改善していきますが、骨盤底筋トレーニングを早期から正しく行うことが回復を支えます。

手術を検討されている方は、事前に術後の生活や回復の見通しについて十分に理解したうえで、担当医としっかり相談してください。当院では、術後の排尿トラブルやリハビリに関するご相談にも対応しています。

スターフォーマーは自由診療(保険適用外)です。施術費用の目安は1回8,000円〜(お試し1回5,000円、通常価格・コース料金は公式ページをご参照ください)、1コースは週2回×4週間(計8回)が目安です。まれに軽い筋肉痛のような症状が出ることがあります。

また、体内にペースメーカーや金属インプラントが入っている方、妊娠中の方などは施術を受けられない場合がありますので、事前に医師にご相談ください。

なお、スターフォーマー(FOTONA社製)は、日本国内で薬機法上の承認を受けていない医療機器です。米国FDA(食品医薬品局)の認可、およびEU(欧州連合)での医療機器認証(CEマーキング)を取得しています。当院では医師の判断のもと、個人輸入により導入し、自由診療として提供しております。効果には個人差があり、主なリスク・副作用については診察時に医師が十分にご説明します。

監修者

足立浩幸

足立 浩幸

院長 / 城東鶴見腎・泌尿器科クリニック/泌尿器科・腎臓内科

泌尿器科・人工透析・総合内科・救急科での豊富な診療経験を経て、2025年6月に大阪市城東区にて開業。排尿障害・尿失禁・性感染症・泌尿生殖器癌など幅広く対応し、患者一人ひとりに寄り添った丁寧な診療を提供している。